一言で感想を言うと面白かった。
このゲームは大戦争の後に荒廃した世界が舞台となっている。その荒廃した世界には突然変異した人間や生き物が当たり前のように存在している。その世界を牛耳ろうとしているのがバイアスグラップラーという名前のならず者集団。そのバイアスグラップラーに母親を殺された青年が主人公で彼(彼女)は仇討ちのためにバギーに乗って旅立ちを決意する、といった感じ。
まあ自分が大好きな所謂ポストアポカリプスなゲームだ。メタルマックス、という名前もこれまたメル・ギブソン主演のポストアポリプス映画マッドマックスにあやかって付けられたものだろうし。乗り物に乗って世界を旅する、というところもなんとなくマッドマックスに近い。メタルマックスの主人公は車だけではなく戦車にも乗るが。バイアスグラップラーというパンクスは北斗の拳にでてくる鋲ジャンモヒカンヤンキー達に似ている。最近のゲームでいうならFallout3に近い。ただFalloutほど激しい暴力、性的表現はない。そりゃ任天堂ハードから出しているゲームだから仕方がないのだが、任天堂規制のせいで表現できなかったことがあるだろうなと想像すると残念だなとも思ったりする。しかしそこはそこで開き直ったのか、エログロの代わりにユーモアがこのゲームには用意されている。
たとえば戦争に使われた戦車なんかが暴走して制御不能になった野良戦車、更には耳がパラボラアンテナみたいになったウサギやネズミ、巨大砲台と一体化したカバ、ゴキブリのようにシャカシャカと自走する常に笑顔な巨大爆弾なんかが敵キャラとして登場してくる。敵キャラはどれもそんなで、強烈にユーモラスで笑わせてくれるしユニークだ。(これは"ブタ"や"アヒル"という名前の癖にどうみても"別の何か"な化け物にしかみえない敵がわんさかでてくるリンダキューブというゲームに近いオリジナリティ。ちなみにリンダキューブは任天堂規制のないハードからでているゲームだ!)ドラゴンやゾンビばかりでてくる最近の洋ゲー なんかに負けないようなオリジナリティがこのゲームにはある。初代のメタルマックスのテーマは「竜退治はもう飽きた!」だ。そのアンチ主流なスタンスが今でも通じるということが分かる。
ちなみに自分はSFCのメタルマックスリターンズ(リターンズもファミコンで発売されたメタルマックス1のリメイク)しかやっていないので今作でもあの時代のグラフィックを想像していたのだけれどSFCで発売されたメタルマックス2のリメイクである今作はSFC時代のメタルマックス2のグラフィックを今風にリファ インしている。例えば敵グラフィックなどはSFC 時代の地味な敵グラフィックとは違う。当時のキビシイ容量制限から開放されていて高品質なグラフィックとなっていて、更に滑らかにアニメーションしている。体に無数の砲台が突き刺さったタコがヌルヌルと動く。これ気持ち悪いし凄い。
それと他の敵グラフィック以外のグラフィック要素ついて言うと3D偏重気味な近年のRPG作品とは違ってSFC時代のオリジナルゲームシステムに準じたものでかなりあっさりとした作りになっている。 戦闘画面なんかは多分2Dになっている。とはいえ建物などの建造物なんかは明らかに3Dになっている。3D空間が用意されていて、キャラグラは2D、建物は3Dとして配置してる感じだと思う。背景オブジェクトにパースがついているのにキャラ絵にはパースが付かないのでそのへんで咬み合わないところはまああった。でもこのゲームは視点が固定されているため3D要素がでしゃばった感じになっていないのでそこはかなりプラスだと思った。このゲームの3D要素は建物の高さなんかを説明するために使われる程度にとどまっている。宝箱の裏面まで見えるような無駄な3D要素はない。正方形の四面だけにテクスチャを貼ればいいことになるので省力化になる(多分)。それに視点が動かないので3D酔いも回避できる。
これはたとえばいちいちボタン操作をしながら視点変更しないとまともにゲームができない3Dドラゴンクエストなんかよりよっぽどやりやすい。これならドラクエほど制作費も無駄にかからないだろうしゲームプレイヤーもストレスを感じない。
それとこのゲームはとにかくマップが広く自由度も高い。そこかしこで発生する細かいサブシナリオの数が膨大でどれもなかなかおもしろい。それに賞金首という倒すとお金がたんまりもらえる強敵がわんさかいるのでそれらを探して倒していくのも楽しい。(たいていの賞金首は追手から逃れるために?へんなところに隠れているので探す必要がある)メインシナリオだけをクリアするなら踏み入れなくても 問題ない土地はワールドマップ全領域の半分以上とかになるのではないかと。このへんはFalloutに似ている。
戦闘システムや戦闘グラフィックはかなりよくできている。
敵味方共に攻撃モーションのアニメーションはしっかりと作りこまれている。例えば戦車が撃った無数のミサイルが標的に着弾し派手に大爆発する、といった格好いいエフェクトはしっかり作りこまれている。しかしアニメーションがコンパクトにまとめられているのでたとえば某ドラクエのように無駄に戦闘時間がかからない。(お前のことだよドラクエ8!)なので1キャラクターが攻撃を終えるまでに数秒程度しかかからない。更に戦闘メッセージのオンオフまで選べるので1回の戦闘にかかる時間もそこまでかからない。この点はかなり良い。
ただこのゲーム自体の難易度はそこまで高くない。このゲームは生身で敵と戦うだけではなく、戦車やスーパーカーに乗って戦うこともできる。その乗り物がとにかく強いので序盤で乗り物を手に入れるとゲームバランスが軽く壊れる。雑魚キャラなんかは戦車の砲撃一発で死んでしまうくらいになってしまうから。このへんはかなり残念だった。
あと序盤で終盤の敵から得られるような経験値をもったザコ敵がわんさかでてくる。ドラクエでいうならゲーム開始3時間くらいではぐれメタルが普通に出てくる感じ。これがゲームバランスを崩壊させる。これは流石にひどいと思った。序盤だけでなく、終盤までずっと経験値管理がいい加減なゲームなのでメインシナリオを放置して寄り道ばかりしていたらレベルが上がりすぎてしまっていた、なんてことがあった。他にも中盤のあるダンジョンでは1回の雑魚敵の戦闘で経験値が3000~4000手に入ってしまうところがあった。しかしそのダンジョンの構成が複雑でな かなか先にすすめない、けれどもザコ敵との戦闘は避けられないので戦闘をこなす。そうするとレベルがどんどんあがってしまう、といった状況に陥ってしまい このままではゲームバランスが完全に崩壊すると思い泣く泣くそのダンジョン攻略を諦めた。あのときは流石にふざけるなと思った。
なので戦闘に関して言うならグラフィックは派手でもかなり作業感が強かった。戦闘中に味方の攻撃力をあげたり敵を眠らせて戦う、といった戦略を練らずとも強力な乗り物と上昇しまくったレベルの強ささえあれば何も考えなくてもゴリ押しで敵を倒せてしまう感じだったから。
ただこのゲーム、ゲームクリア後に周回プレイを開始すると難易度が上昇する。難易度があがれば敵のHPが上昇したりする。でもこれはおかしい。難易度は初見プレー時点で選べるようにしておくべきだったと思う。自分は一周目のプレイで50時間費やしてしまった。その状態で流石に同じシナリオをもう一度やる気は起きない。自分や、たとえばSFC時代の高難易度なメタルマックス2をやっていた人間なんかは本作は難しくないと感じるに違いない。そういう人間のために最初から難易度を選べるようにしておくべきだった。誰もが遊べるような難易度設定にしているのはわかるが、誰もが遊べるような難易度のゲームを望まない人間がいることも考慮に入れてゲームを作るべきだった。
あと登場人物のキャラグラフィックが軟派すぎてどうもしっくりこなかった。
どいつもこいつも美形だらけで個性がない。例えるなら平成仮面ライダーの登場人物のような顔をしてる。そいつらが大破壊後の世界なのに原宿あたりにいそうなおしゃれな服飾系の専門学校生が着ているようなシミ一つ無いアヴァンギャルドな服を着てるという。敵グラフィックはユニークなのにどうしてこうなったのか。Falloutにでてくる人間は何年も風呂に入っていないようなすす汚れた顔してる奴ばかりだぞ。ほんとここは残念だった。まあそのキャラグラフィックもステータス画面でちょこっと見える程度なので大きなマイナスにはならないが。なんちゃらエニックスのファイナルなんちゃらみたいになってもらっては困る。
ということでこのゲームの感想まとめ。
色々と不満点もあるのだがそれらを相殺するような楽しさがこのゲームにはある。
前述のとおり自由度がとても高いのでサブシナリオを探してクリアしていくのが楽しい。戦車やバイクといった乗り物を探すのも楽しい。更に金属探知機を使って地面に埋まっている武器道具を探すのも楽しい。なのでゲームをやったあとの感想は楽しかったとなる。このゲームは前述の通り、amazonのレビュー評価も良いし、有志が作ったWikiなんかも充実している。愛されているゲームなのだろうなと思う。悪い点もあるが総合的な評価は良いゲームと落ち着く。プレイ後の大冒険を終えた感じはそうそう味わえるものじゃない。
あと任天堂規制について触れたけど規制といえばこのゲームは核とか一切でてこない。ゲームの設定上核ミサイルとかでてきてもおかしくないがそれもない。でも「水が汚れて飲めない」、「汚染された雨が降ってくる」、とぼやく人や「汚染された湖でとれた奇形魚はどうだい?」と捕ってきた魚を売る漁師なんかがばっちりゲームに出てくる。敵モンスターだって核のせいでああなったとはっきり言ってしまえばいいだろうがそういう説明はない。日本は原爆を落とされた国だし、つい最近だって北の方で大変なことになってるからこのへんの描写はぼかさざるをえないんだろうなとは思うが。逆にまったく同じようなゲームであるアメリカで制作されたFalloutはここらへんばっちり描写してきている。被曝して肌が溶けた人間はグールと呼ばれ差別される、放射能汚染された水につかればガイガーカウンターがバリバリなるし核で突然変異した化け物がそこら中にうようよいる。なんというか、原爆を落とした国は遠慮せず、原爆を落とされた国は遠慮する、というこの状況は一体何なんだろうかと少し考えたりもする。メタルマックスもFalloutも好きなゲームなのだが。
他にもゲームで言うならロシアのドミトリー・グルホフスキー原作でウクライナの4A Gamesが制作したメトロ2033だって放射能汚染の描写はばっちりでてくるし、同じくウクライナのGSC GAME WORLDが制作したS.T.A.L.K.E.R. シャドーオブチェルノブイリなんて、ウクライナのチェルノブイリ原発がもろにでてくるゲームだ。今やるのは無理かもしれないが、メタルマックスリターンズが発売された当時に福島原発の事故はなかったし、時代は最早戦後だった。それなのに当時ですら放射能の描写はできなかったようだ。規制というやつはめんどうなものだなと思う次第である。放射能という奴はエグいくらいの現実感があるし、SFに使う素材としてはぴったりだとは思うのだが日本ではちょっとした禁忌モノのようだ。
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